脳ドック

『養生訓 巻第六』では、「無病の時、慎みありて恣(ほしいまま)ならざれば、病生ぜず。其、病んで後、能く薬を服せんむより、病む前、能く自ら防ぐにしかず」と日頃の心得を提唱しています。

まさに脳卒中に当てはまる奨めです。これまでの脳ドックは、脳卒中のもととなる「かくれた病変を見つける」ことが目的でした。最近は、これをさらに進めて、「もととなる病変が生じない」よう指導することが肝要と考えられるようになりました。

日常診療で感じることですが、喫煙=肺がん、アルコール=肝疾患、不整脈=心疾患と考えても、これらを脳卒中に結びつける人は多くはありません。脳卒中予防のため診察室血圧130/80mmHg、自宅血圧125/75mmHgと血圧管理がより厳格化されましたが、その普及もまだ不十分です。また不整脈(心房細動)はとくに脳梗塞の重大な危険因子です。心原性脳塞栓症で倒れた長嶋監督やオシム監督が、自分で脈をとり、お元気な時に不整脈がみつかっておればと残念に思います。

脳ドックは我が国独自の健診システムで、2010年から日本脳ドック学会の施設認定制度が始まりました。認定の基準としては、日本脳ドック学会員が実施していること、必要な検査項目を満たしていること、高い検査精度などが要求されています。

施設認定の取得は、2016年秋から準備を始め、2018年4月に認定をいただくことができました。認定施設数は2021年4月の時点で全国290施設、長崎県南で唯一の認定施設です。

現在は人間ドックなどにオプションとしての頭部MRI検査と、脳ドックのガイドラインに準拠した検査をフルセットで行う脳ドックの2種類です。2018年度の実績数は390名でしたが、内訳はオプションとしてのMRI検査236件、フルセットの脳ドック154件でした(表1)。

当センターでは、診断に誤りがないよう脳神経外科専門医と放射線科専門医がダブルチェックでMRI結果の判定にあたっています。また、いずれのコースの健診でも、脳卒中に関連する内容をまとめた冊子『脳外科通信 第1話~11話』をお渡ししたうえで、脳卒中予防を中心に30分間前後の面談を行っています。地域で最も信頼される脳ドック施設となり皆さんに貢献したいと願っています。

◆ 脳ドックパンフレット2023

表1.脳ドック・脳健診の実績

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
実績数 337 347 390 456 390 535
脳ドックを単独受診 2 66 73 101 87 105
脳ドックをオプション受診 9 70 81 85 67 54
簡易脳検査(上記以外) 326 210 236 270 236 376

検査項目

検査項目 脳ドック 人間ドック・生活習慣病等にオプションで受診する場合
脳検査 頭部MR検査
問診及び診察 既往歴、家族歴、生活歴(喫煙、飲酒、運動)、危険因子を含む問診
神経学的診察(専門医による)
頸部血管雑音の聴取
〇 〇 〇
身体計測 身長、体重、腹囲、BMI 〇
血圧測定 収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍 〇 〇 〇
血液一般検査 赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数 〇
尿検査 尿糖、尿蛋白、尿潜血 〇
生化学検査 総蛋白、アルブミン、血糖、HbA1c、AST(GOT)、ALT(GPT)、γーGTP
総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール
中性脂肪、尿酸、クレアチニン、尿素窒素
ナトリウム、カリウム、クロール
〇
心電図検査 安静時心電図検査(12誘導) 〇
認知機能検査 長谷川式簡易知能評価スケール 〇 〇
頭部検査 頭部MRI検査
頭部MRA検査
〇 〇 〇
頸部MRA検査 〇
頸部検査 頸部血管超音波検査 〇 〇
結果説明 専門医師による結果説明 〇 〇 〇
総合判定
検査費用(税込) 40,700円 34,100円 27,500円